「親兄弟を殺すぞ」暴力団関係者を装ったガールズバーのオーナー(古川寿仁)(強制性交等、監禁など)

略取
  • 大阪地方裁判所:第3刑事部合議係
  • 罪名:強制性交等、わいせつ略取、監禁、恐喝、恐喝未遂
恐喝の現場は人通りの絶えない商店街の一角(撮影=櫛麻有)
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2時間半に渡った性暴力

 2020年5月15日午前11時ごろ、大阪市北区の路上にて、少女A(19)とAさんの交際相手の男性B(20)、Bの知人男性Cらに対して、元ガールズバー責任者・古川寿仁(49)が「家族を殺すぞ」などと言い、現金5万円を脅し取った。(恐喝)
 その後、古川はAさんをラブホテルに連れ去り、約2時間半に渡って口腔性交と性交に及んだ。(わいせつ略取、監禁、強制性交等)
 グレーのジャージ姿で法廷に現れた古川は、ガールズバーの責任者は自分でないとし、「Aは自分で脱いで誘ってきた。『殺すぞ』や『どうケジメをつけるんや』なんか言っていない。現金は『持っておいて』と渡されただけ」と起訴内容をすべて否認した。

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「海外マフィアと交遊がある」

 事件前日、Aさんは採用面接を受けるため古川のガールズバーを訪れた。Bから「運営しているのは暴力団関係者か」を聞くように言われていたAさんは、Bの指示通りに質問したところ、古川は激怒。Aさんと古川は電話番号とLINEを交換し、翌朝にA・B・Cの3人が古川に直接謝罪することとなった。Bはガールズバーを運営している店にケツ持ち(みかじめ料の対価として動く暴力団)が多いことを心配したという。
 古川は3人に対して、「手足切り離したのを見たことあるか」といったダルマの話、「大金が動いている」「海外マフィアと交遊がある」「親兄弟殺すぞ」などの脅し文句を次々と吐きかけ、暴力団の連絡先と称するスクリーンショットをLINEでAさんに送った。その上、「女を抱かせろ」「1時間貸せ」と要求した。Aさんが泣きながら土下座をしたところ、古川はBとCにそれぞれ50万円を要求し、払うのなら「鉄板を通す(=抱きはしない)」と迫った。

裸のまま助けを求めた被害者

 結局、Aさんは古川に肩を組まれてラブホテルへ連れて行かれた。部屋に入ってすぐにフェラチオをさせられ、風呂に入った後は性交を強いられた。Aさんが「Bには何もしないで」と求めたところ、「言うとおりにしたらしない」と答えた古川に、Aさんは恐怖で抵抗できなかった。
 性交が終わり、Aさんがスマホを触ろうとすると古川は怒り、「くわえろ」と言われ、Aさんは泣きながら応じるしかなかった。古川の目を盗んでもう一度スマホを触ろうとすると、「殺すぞ」と言って古川はスマホを取り上げた。Aさんは裸のまま廊下に飛び出し、フロントに助けを求めた。

古川の言い分

 古川はあくまでも、ガールズバーの手伝いをしているだけだと主張した。面接中に怒ったのは、Aさんがスマホを触り始めたり、店の売上を聞いてきたりしてきたからだという。現金5万円は、Bが預けてきた財布の中身で、預けてきた理由はよくわからなかった。謝罪として100万円を出す、と持ちかけてきたのはCで、ホテルに行く流れも理解できていなかったと古川は述べた。
 Aさんに「汗かいたんでお風呂に入りましょう」と言われ、腰が痛いためAさんの肩を借りた。性行為もAさんの方から誘ってきたとし、「ハメられたと思っています」と古川は訴えた。

対立する主張

 検察側は以下の点を指摘して懲役9年を求刑した。
・防犯カメラに、古川がAさんの肩に腕を回している様子が記録されている。腰痛がそれほど酷いならば、性交はできないのではないか。
・19歳の少女が裸のまま部屋から出るのはよほどの事態。
・スクリーンショットの連絡先は本物で、実在している暴力団のもの。
・古川と面識の無かった3人が虚偽の証言をする理由が無い。
・極めて卑劣かつ悪質で反省の情が無い。

 それに対して、弁護側は以下の点を挙げて無罪を主張した。
・ガールズバーのオーナーは別にいて、そのオーナーと古川は対応を協議していた。Aさんらが暴力団関係者を連れてくる可能性を考えて、待ち合わせ場所を路上にした。
・現場は人通りの多い路上だが、やり取りの客観的な証拠が無い。(目撃証言など)
・金品が欲しいなら現金だけ要求すればよく、財布ごと持ち去る理由が無い。
・BとCの身代わりにAさんは性行為に応じた、と古川は考えていた。同意が無かったとしても事実を錯誤していた。

裁判所「同種事案の中でも極めて悪質」

 古川は最後に、「私は無罪です。そもそも脅していないです。無理やりやっていません。同意の上です」と陳述した。
 判決は、懲役7年(未決勾留日数200日を算入)であった。
 裁判所は公訴事実を全面的に認定した。目撃証言が無いことは、脅迫を大声でしていなかったため不審に思う者がおらず、不自然でないとし、Bが交際相手であるAさんの性交に同意するとは考えられないとした。
 その上で、あたかも反社会的勢力と繋がりがあるように信じ込ませて及んだ犯行は、悪質性が高いという理由であった。

BとCは何をしたかったのか?

 この事件はいわゆるベタ記事で、メディアの扱いは小さいものだった。それでも公判に関心を持ったきっかけは、Bが証人出廷をすっぽかしたからだ。検察官によると、出頭前日まで連絡はついていた。ところが、現れないBを1時間ほど待ち続けたまま当日は閉廷となった。
 Bの証言に古川の「お前ら、画(え)を描こうとしてるやろ(=罠にハメようとしてるだろ)」という発言が出ていたのだが、この事件の不自然さを表していると言えるのではないか。というのも、ケツ持ちが本当にいたとして、店側が素直に認めるとは思えないからだ。Aさんが被害に遭うのは想定外だっただろうが、BとCに何らかの企みがあったのではないかと、疑問に感じた事件であった。

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