- 大阪地方裁判所:第11刑事部合議係、裁判員裁判
- 罪名:傷害致死
箕面市の介護福祉士の男(43)が2019年6月13日、勤務先の障害者支援施設にて利用者の男性(30)に暴行を加えた。男性は同月24日に心不全で死亡した。
検察側は頸部圧迫(首絞め)と腹部などへの殴打が死因と主張。弁護側は不整脈で容態が急変し、胸骨圧迫(心臓マッサージ)などの救命措置によって致命的な損傷が起きてしまったとして無罪を主張していた。
22年3月16日、記者席11席と一般の傍聴人で満席となった大阪地裁434号法廷で、男に無罪が言い渡された。
首を絞めて窒息させたのか?
検察側は舌骨の骨折が見られるため、頸部圧迫によって死亡したと主張した。舌骨は喉仏の上部に位置するため、骨折しづらい部位であり、逆に言えば折れていると絞殺の可能性が高くなる。
ところが弁護側証人の医師がCT画像を確認したところ、骨折は見られず、医療措置によって離解したか、もともと未癒合であった可能性を指摘した。また、首の中に内出血が認められなかった。
腹部への暴行はあったのか?
慣れない人が心臓マッサージをしたことにより、胃腸が破裂するケースが多くあるという。亡くなった男性は腸間膜が損傷していたが、この部位についても措置によって損傷するケースが存在する。裁判所は、暴行による損傷と断定できないとした。
その他、事件性が疑われた点について
眼底や頭蓋内にうっ血が確認されたが、これは急死一般に見られる現象である。また、救命措置に関わった医療関係者が全員、顔面のうっ血を否定している。
以上の点で、男性は高度のストレスと薬の相互作用による不整脈で容態が急変し、外傷はすべて救命措置によるものであると結論づけられた。
裁判長の不手際で初公判が続行不能となり、度重なる延期を経た裁判員裁判であった。弁護人は無罪請負人の名を馳せる人物であり、著名な医師を証言台へ呼んだことが無罪へつながったものと思われる。
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