Uber Eatsの外国人配達員を狙った女子大生(通貨偽造・同行使)

通貨偽造
  • 大阪地方裁判所:第2刑事部合議係、裁判員裁判
  • 罪名:通貨偽造・同行使
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家庭用コピー機で震えながらの偽造

 2021年4月29日、大阪市の女子大生A(21)は家庭用の複合プリンターで1万円札をコピーした。Uber Eatsでアイスクリームを約4000円分注文したが後悔し、到着前にあわてて偽造を始めたため、届いた時には未完成であった。
 外国人の配達員が到着してインターホンを鳴らすも、5分ほど待たされ、無言で渡された1万円札にはホログラムが無かった。他の紙幣に替えるよう頼まれたAは20分ほど部屋に引っ込んだまま出てこなかったため、配達員は110番通報。到着した警察官が玄関をノックしても現れず、Aから電話を受けて駆けつけた父の説得に、Aは観念して玄関ドアを開けた。

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これだけで裁判員裁判?

 事件翌日の家宅捜索で、複合プリンターやハサミ、散らばった紙片が見つかった。プリンターは2017年発売のエントリーモデルで価格は2万円ほどだ。進学する学生が買い求めるありふれたプリンターと言っていいだろう。
 以前AがUber Eatsを利用した際、外国人配達員が釣り銭を間違えたため、アイスクリームの配達にやって来るのが外国人であるとアプリで確認して、「バレないのでは」と偽造を始めた。コピー用紙に1万円札を両面カラーコピーしてできあがったニセ札は、ホログラムや透かしが無いことはもちろん、ハサミで切ったため下部が不自然に欠けていた。科捜研が鑑定し、ニセ札であると確認された現物は、法廷で3人の裁判官と、補充を含めた8人の裁判員が実際に手に取って出来映えを確かめた。黒いリクルートスーツ姿のAは、小柄な体をさらに縮こめているような様子だった。
 通貨偽造は無期または3年以上の懲役という極めて重い罪だ。組織的に大量生産され、経済を混乱させることもありえるからだが、まさか自分が裁判員裁判の対象となるとはAも思っていなかっただろう。

贅沢暮らしが染みついて

 ひとり暮らしのAは、学費・家賃・光熱費・通信費がすべて親持ちで、8万円の仕送りを受けていた上、アルバイトで7万円の収入があった。平均的な新卒社会人より恵まれた生活である。それでも偽造したのは、「自分の稼いだ金を使いたくなかった」という身勝手な理由による。ハサミを使う手は震えて思うように切れず、ようやくできたニセ札を配達員に気づかれないよう折って手渡した。
「これ違いますよね」と言われたAは玄関ドアの鍵をかけて本物の金を探した。ところがノックの音に恐怖を覚え、「お金渡したいのに怒られそうだし、外国人だから殴られそう」などと考えてドアを開けられず、一人で警察署に連れて行かれるのが不安で父親に電話をかけた。
 弁護人と検察官、そして裁判員からも質問されたのは、なぜ裕福な暮らしにも関わらずニセ札を作ったのかという点であった。Aは交際費や洋服に金を浪費し、手持ちの金を使い切って困ることが何度もあったと答えた。今思えば、感覚がおかしくなっていたという。

裁判員の願い

 検察側は懲役3年を求刑し、弁護側は寛大な処分を求めた。
 判決は、懲役3年執行猶予4年。ニセ札は没収となった。実質的な被害は無く、犯行は場当たり的。未熟さゆえの犯行で反省もしており、社会内での更生が適切という判断である。
 裁判長は最後に、「学業に専念して、今後は道を踏み外さないでください。それが我々一同の願いです」と諭した。
 Aは公判当時、就活中とのことだった。立派な社会人となるよう私も願っている。

通貨偽造
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法廷扉の小窓より

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