酒気帯び運転の捜査がよくわかった事件(道路交通法違反)

道路交通法違反
  • 刑事裁判:大阪高等裁判所
  • 罪名:道路交通法(65条 酒気帯び運転)

「主文、本件控訴を棄却する」
 刑事裁判の場合、控訴審の7割は棄却される。そのため棄却を言い渡された瞬間、傍聴人はやれやれといった様子で傍聴席を離れていくのがよくある光景。
 ところが、その日は次の裁判まで時間があったため、理由まで聞くことにした。これが案外おもしろかったので記事にしてみようと思う。

量刑不当じゃなかった……!

 控訴の理由の大半が「量刑不当」(刑事訴訟法381条)を主張するもの。これまで聴いた中では、強制性交、果ては殺人まで、量刑が重い場合、被害者やその遺族への補償が十分であるとして量刑不当を訴えることがほとんどだった。
 本件をわざわざ聴きに行った理由は、道路交通法という比較的軽い違反で控訴にまで至ったのが気がかりだったから。以前の記事でも説明したが、道交法はほとんどが略式裁判で処理される。

50km/h制限の道路を140km/h飛ばして懲役に(道路交通法違反)

 ところが控訴理由は事実誤認(刑訴法382条)だった。主張は以下の2つ。

  1. 測定結果が捏造されている
  2. 測定数値に疑問が残る

 酒気帯び運転が発覚したのは未明に追突事故を起こしたから。そこで、捜査は前夜の飲酒量を突き止めることから始まった。

どのようにして飲酒量を調べるのか

 発覚前夜、被告人の男は家族で飲食店に行っていた。店内には防犯カメラがあり、その飲酒量はいともたやすく証拠して残っている。ビール中瓶1本とコップ2杯、日本酒を2合。午後6時57分までこれらを飲んでいたことが克明にわかった。
 計算すると純アルコール量は83.2g。一般男性では消失まで約17時間かかる。
 理由(2)の数値に疑問が残るという主張は特に疑わしいものでもなく、また、被告人の主張(店での飲酒量)以外に帰宅後も飲酒した可能性は否定できない、とされた。
 理由(1)についてだが、検査後に被告人は検査結果についての署名を拒否したため、それに沿った主張のようだ。しかし測定値はプリントアウトされているもので機械をごまかせるはずもなく、これについても否定された。
 以上、ただ原判決が維持されただけの話なのだが、訴訟費用もかかるだろうになんで納得いかなかったんだろう……と聴いていた私に疑問が残る控訴審だった。

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