轢いた相手は顔見知りだった(過失運転致死)

過失運転致死傷
  • 大阪地方裁判所:第5刑事部1係
  • 罪名:自動車運転処罰法(5条 過失運転致死傷罪)

サンキュー事故の怖さ

 2020年7月14日午前11時ごろ、大阪市住之江区南港東の交差点にて、同区のトラック運転手(当時)の男(47)が右折を待っていたところ、対向車に進路を譲られた。そこで青信号に従って右折していたところ、横断歩道を横断中の自転車に乗った男性(68=当時)と30km/hで衝突。頭部外傷により、搬送先の病院で同日午後0時03分に死亡が確認された。
 事故直後に110番通報しようとしたが、手が震えてスマートフォンを操作できず、駆けつけてくれた人に代わってもらったという。救護中、被害男性の目は徐々に閉じていった。

しばらく気づかなかったこと

 男は被害男性と顔見知りであった。被告人宅から200m離れたところにカラオケ喫茶があり、被害男性とその妻の2人が切り盛りしていた。客として男は何度か利用しており、勾留後、近所の人に聞いてやっと気づいたという。かなり噂になっていたのだ。
 葬式も四十九日も参加は許されず、男は月に10枚は写経をして供養の努力を続けている。被害者の妻は「事故が起こりうることは頭ではわかっているが……」と気持ちに整理がついていない旨供述していて、被告人からの謝罪文は受け取った。謝罪文は受け取り自体を拒まれることがほとんどである。だが、夫婦の息子の処罰感情は強い。
 男は事務方に回され、月給は40万円から16万円へ減少した。情状証人に名乗りを上げた友人はいたが、謝罪の気持ちから、裁判が公平になるようにと断ったという。

結果

 検察側は、職業運転手として考えると過失の程度は大きく、遺族の処罰感情も強いとして禁錮2年を求刑した。
 弁護側は、同種事案と比べて過失の程度が大きいといえず、救護努力をした上、反省と供養に努めている。減給により一定の制裁を受けているため、執行猶予が相当と主張した。
 男は最終陳述にて、「被害者の方に大変申し訳ないことをした。生涯伝え、償っていく」と陳謝した。
判決は、禁固2年執行猶予3年であった。
 注意義務を怠った過失は大きいが、悪質とまでは言いがたく、自動車賠償保険での保障が見込まれる点を理由に挙げた。
 裁判長は、「不注意とはいえ遺族の悲しみに思いを馳せ、冥福を祈ってください」と説諭した。

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