素手で凶器を取り上げ逆襲した男(丸野友也)(殺人、殺人未遂)

殺人
  • 大阪地方裁判所:第14刑事部合議係、裁判員裁判
  • 罪名:殺人、殺人未遂(訴因変更前は殺人未遂2件)
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現場となった西成区の路上。飛田新地に近く夜間でも明るい

事件の概要

 奈良市の建築作業員、丸野友也被告(51)が西成区の路上にて被害者2人(このふたりは兄弟)とケンカになった末、木製バットで兄弟を殴打。兄は1ヶ月弱ほど後に病院で死亡し、弟は全治3ヶ月の重傷を負った。丸野被告は2人に対しての殺意を否定し、「自分を守ろうとしてこういう結果になってしまった」と主張。弁護側は過剰防衛であり、兄に対しては傷害致死、弟に対しては傷害にとどまるとした。

収まったかにみえた口論

 事の発端は被告人が飛田新地近くの居酒屋に入ったことだった。被害者となる弟が先に飲んでいて、ツケのある丸野と口論になった。なぜ客同士でケンカになるのかが取材していてどうにもわからなかったのだが、ともかく店の人と他の客が止めに入り、丸野が弟に1杯おごったことでその場は収まったかにみえた。
 客の中には丸野の内妻もいたという。

終わらないケンカ

 ところが事件は急展開をむかえる。2020年1月13日午前1時57分、兄弟らが丸野に電話をかけ外に呼び出した(つまり丸野と兄弟は知人)。
 店にいた客2人がなだめるも、丸野は店外へと向かった。
 丸野を認めた兄弟は車から凶器を取り出した。兄は木製バット(全長86cm重さ912g)、弟は鎌といった具合である。
 そして兄はバットで殴りかかった。
 対する丸野は丸腰だったのだが、なんと2人の凶器を取り上げてしまった。服役歴があり、ケンカには相当強いのだろう。
 バットを手にした丸野は兄の左頭頂部を殴り、兄は倒れ込んだ。続けて上体を起こした兄の後頭部めがけてフルスイング。開放骨折を伴う脳挫傷を負い、これが致命打となった。
 この様子を見た弟は逃走を図ったのだが、2~3回バットで殴られ、腹部にボレーシュートの要領で蹴りを入れられた。(裁判員にわかりやすくするため検察側が考えた比喩であるが、イメージしにくい例えでは?)
 倒れた兄弟を丸野は自身のスマートフォンで撮影した。

その後の兄弟

 兄は脳挫傷により翌月4日、搬送先の大阪市立大学医学部附属病院で死亡が確認された。弟は左硬膜下血腫で1680mlもの輸血を受け、一命はとりとめたものの、全治3ヶ月を要する重傷を負った。

丸野の主張と弁護人の意見

 鎌を持っていた弟の目付きに殺意を感じたという丸野は、無我夢中でバットを振り回したためにどこを殴ったか覚えていないと主張。弁護側は丸腰でひとりだった丸野には殺意が無かったことに加え、生き残った弟が減刑を求める嘆願書を提出したことを挙げ、執行猶予か、実刑であっても短期間とすべきと述べた。
 対して検察側は懲役20年を求刑した。

結果

 判決は、懲役13年(未決勾留日数200日算入)であった。かなりの温情判決といえる。
 丸野は凶器によるケンカを予想しておらず、緊急状況であったことを認定。1回目の兄への殴打に殺意は無かったとした。(正当防衛)
 しかし、2撃目には殺意があったとし、殺人罪が成立するとした。
 一方で、逃げる弟への暴行は最初から殺意があったと推認し、殺人未遂の成立を認めた。
 弟には後遺症があり、前刑での出所後3年での犯行は強い非難に値するものの、弟の嘆願書があり、内縁の妻が監督を約束していることから、大幅な減刑となった。

殺人
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法廷扉の小窓より

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