泥酔サラリーマンが好きな2人は東京・大阪で10人以上の男性を(北条隆弘・矢上大助)(準強制性交等、準強制わいせつ、他)

強制わいせつ
  • 大阪地方裁判所:第15刑事部合議係
  • 罪名:準強制性交等、準強制わいせつ(北条に対し)・準強制性交等、同幇助、準強制わいせつ、同幇助、麻薬及び向精神薬取締法(矢上に対し)(※準強制わいせつに関しては2017年の法改正以前の犯行で、肛門性交は現在、強制性交等に含まれる)

被害者が多すぎて起訴状を読むのに2日

 大阪市住之江区の元中学校教諭、北条隆弘(43)と住所不定無職、矢上大助(45)は10年来の友人であった。2人は共謀の上、大阪では2017年2月28日、Aさん(20=以下当時)に北条の住んでいたアパートにおいて、睡眠導入剤であるハルシオンを混入させた酒を飲ませて口腔および肛門性交。Bさん(28)に同年12月9日、北条宅にて同様の犯行。Cさん(27)も同月13日に同じ被害に。Dさんは18年1月29日に同じ場所と犯行に遭い、Eさん(26)は同様の手口と場所だが、口腔性交のみ。Fさん(41)は心斎橋の飲食店でハルシオンを盛られ、北条方に場所を移して口腔性交。Gさん(22)は同じ場所で同じ手口なのだが、別の日にもう一度被害に遭っている。
 東京では、Hさん(29)が18年10月30日、品川の有名ホテルの一室にて口腔性交の被害に。Iさん(25)は19年1月19日に同ホテルにて口腔性交および肛門性交の被害に遭った。警察に身柄を押さえられたのは東京でのことである。
 起訴状朗読や冒頭陳述中、顔を真っ赤にしていた北条は、「人が多すぎて個々に覚えていませんが……」と起訴内容を認めた。週刊誌の報道では、被害者が20人はくだらないのではないか、とあったがあながち間違いではないだろう。追起訴という形で起訴状の読み上げは2日に分けられ(したがって通常の追起訴より間隔が短い)、罪状認否も2日目の審理になってからであった。
 起訴状のあまりの分量についていけず、被害者の年齢や犯行日時に抜けがある点はご了承願いたい。東京と大阪合わせて10件もの公訴事実が示された。また、アルファベットは筆者の振り分けであり、公判と異なる。

同性の安心感につけ込んで

 中学・高校の教員免許を持つ北条は、スーツ姿の男性にムラムラする。フェイスブックでターゲットを見つけると、「授業にスーツ姿の資料写真がいる」と偽って、教員の立場を利用して謝礼を提示して被害男性を誘い出していた。
 ゲイの交流サイトで知り合った矢上からハルシオンを譲り受け(よって矢上は向精神薬取締法違反)、前述のように昏睡レイプ。北条と矢上の陰茎を咥えさせることもあれば被害者の陰茎を咥えることもあり、肛門も同じで、被害者の陰茎を自分の肛門に挿れることもあった。
 犯行の様子は矢上が撮影していて、北条は覆面を着用していた。映像を麻酔科医が鑑定した結果、「アルコールと薬物の併用が考えられる」とされ、被害者の免許証を被害者の裸体に乗せるなどしていたために身元の特定につながった。逆に言えば、被害者が特定できていない映像もあるということで、やはり被害者は10人どころではないのであろう。
 東京では被害男性と品川駅で待ち合わせをし、「結婚式の乾杯風景を撮影したい」という口実で某有名ホテルが犯行現場となった。

命の危険もあった

 20年7月15日に懲戒免職となった北条だが、15年に肺炎の検査を受けた際、HIV陽性が判明した。このため、警察は身元が確認できた被害者に検査を受けるよう連絡。多くの被害者は「どうしよう……」と不安になり、全員が陰性であったものの強い処罰感情を持っている。
 HIVについて、「被害者の命を軽く見ていた」と北条は声をつまらせた。が、再犯可能性について聞かれたときは「人の人生をメチャクチャにする人間ではない」と供述していて、話の整合性がとれてないように思える。

きっかけ

 大学生の頃にネットを通じてゲイを自覚したという北条は、卒業後、スーツ姿の男性がより好きになった。成人向け映画館に初めて入った際、寝ているスーツ姿の男性に隣の男がいたずらをしていて激しく興奮したという。(成人向け映画館は今や、ゲイが集まる〝ハッテン場〟と化していることは周知の通り)
 15年ほど前に、泥酔したサラリーマンを求めてウロウロしていたところ、ちょうど道端で寝ていた男性を見つけて30分ほど通行人が途切れるのを待って、服の上から性器を触った。そして、自宅に連れ帰り、初めての犯行に及んだ。まだ矢上と知り合う前の話である。
 異性愛者(検察官が「いわゆるノンケ?」と尋ねていた)に興味があったが、同意を得られないために「イヤな思いをしてないという勝手な言い訳」で昏睡レイプを繰り返した。

「エスカレートする自分に、いつかやめなきゃと」

 当然バレたら捕まることはわかっていた。だが、犯行はエスカレートする。
 北条と矢上は2人ともネクタイで縛るのが性癖で、実際に被害者の脚を縛っている。北条が撮影役にまわることもあったが、動画はあくまで記録のためで、自慰行為に使ったことはないという。
 警察が把握できていない犯行はすべて北条による単独のもので、被害者の中には、以前から面識のあった男性もいた。
 裁判の感想を検察官から聞かれ、「なんで生まれてきたんやろ」と吐露した北条は、傍聴席に友人が来てくれていることに触れ、今後について「できたらGPSを埋め込まれたい」と述べた。

往生際の悪い矢上

 北条から〝師匠〟と呼ばれていた矢上は、美大出身で、元々は絵の画材として写真を撮っていたという。とはいえゲイであり、スーツは身体のラインが出るから好き、とのこと。ネクタイ姿はより好むが、ネクタイで縛ることに興味はない、と北条とは異なる供述をした。当初の写真撮影は、街中で本人に断ってから撮っていたらしい。
 しかし、犯行に関しては否定するか、記憶に無いと主張するばかりであった。10年来の友人である北条を、「人の話を聞かなかったり貸したものを返さなかったりで身勝手」と評し、北条宅にも5回ほどしか行っていない上、撮影も3回ほどと発言。ハルシオンは犯行に使っていないし、警察への供述は「何度も聞かれて訳わからなくなって供述した」と内容をほとんど覚えていないとした。

殺人より重い罪

 検察側は、10名に対し長期間に渡って多数回犯行に及んでおり、その刑事責任は重い。常習性・計画性があり、根深い犯罪性向がある。教師の立場を利用した犯行手口は巧妙かつ悪質。犯行は数時間に及ぶものもあり、コンドームを使用していないため被害者の生命身体を害する可能性があった。被害者の精神的苦痛は大きく、性欲のおもむくままであって再犯可能性が高いとして、懲役24年を求刑した。
 弁護側は、取り調べに素直に応じており、更生意欲がある上、刑務所での更生は難しい。教員としては真面目であって、家族の協力もある。計300万円の示談金を支払っており、うち1名からは宥恕を得られている。前科がなく、懲役5年や7年の類似事案があることから、これを考慮した寛大な処分を求めた。
 最終陳述で北条は、「償いの気持ちを忘れることなく被害者を思い続けたい」と改めて謝罪の意を示した。
 判決は、懲役20年(未決勾留日数中290日を算入)であった。被害者1人の殺人が懲役15年±3年ぐらいだと思うが、やはりかなり重く出た。
 理由としては、強い犯意に基づく犯行でわいせつの強度は高く、被害者の精神的自由の侵害の程度も大きい。人格を無視したもので、被害者はビデオに強い衝撃を受けており、同種事案の中でもかなり重い部類に属する。1名からは宥恕があり、弟と母が監督を約束しているが、今回の量刑に至った。というものである。
 ちなみに矢上は懲役6年(未決勾留日数中330日を算入)で済んでいる。
 あまりビデオに映っていないこともあり、証拠の少なさが量刑の差となった。
 共犯者がいる場合、長年の付き合いを無かったことにするパターンは多い。本件では北条が矢上を擁護する発言が多かったのに対し、矢上はとことん北条のせいにしていた。
 捜査が進展すれば、服役中の再逮捕もあるかもしれない。そうなったほうがいいのか悪いのかは判断しかねるが。

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