母親を殺した桐生のぞみ被告が懲役10年に減軽された理由(殺人、死体損壊、死体遺棄)

殺人
  • 大阪高等裁判所:第3刑事部
  • 罪名:殺人、死体遺棄、死体損壊

1審の内容

 桐生のぞみ被告(34)は20年前から実父と離され、母親の監督下に置かれた。医療系の道へ行くという進路を母親は勝手に設定し、強制した。当然、被告は抵抗したが、スマホの所持が発覚すると土下座で謝罪させられるほど苛烈な扱いを受けた。何度も家出を繰り返したが、未成年のうちは警察に通報し、成人してからは探偵を雇ってまで家に連れ戻された。
 追い詰められたのぞみ被告は、ネットで殺害方法を検索したり、Twitterに殺意などを書き込んだりした。(これが1審で殺害を認定した証拠のひとつ)
 ある日、スマホを破壊されて「出て行け」と言われたことからのぞみ被告は殺害を決意。そして犯行に及んだのである。
 しかし、大津地裁での第1審で、のぞみ被告は死体損壊・遺棄だけを認め、母親は自殺したと主張。司法解剖の結果、失血死でないことだけはわかり、殺害方法は不明だったのだが殺したのはどう考えても彼女しかいない。そのため、殺人を認定して懲役15年の判決が言い渡された。

自白の理由と分析

 1審判決で殺害を認定されているため、「私が殺しました」との自白にどのような意味があるのか話題になった。自白して反省の態度を示す、というのが一番の目的であるとは思う。ただ、殺人での懲役15年というのは相場通りの判決なので、むしろデメリットの方が大きいのではないかと私は思った。
 というのも、自白して殺害方法を示したのだが、その方法というのが包丁で頸部を何度も刺し、刃先が骨にまで達したというものだったのだ。これはかなり強い殺意を意味する。あるベテラン傍聴人は、殺害から解体までをリアルに法廷で耳にした結果、昼食が食べられなくなった。
 重すぎない判決を得たのにあまりにリスキーではないか……まあこれは素人考えに過ぎなかったのだが。

控訴審判決

 自白の内容を受けて、大阪高裁は原判決を破棄した。1審では「近隣住民を恐怖させるような残忍な犯行」とされていたが、これを否定。計画性が無く、破棄しなければ正義に反するとし、実父との関係が回復したことや自白により反省が深まったことを認定して、懲役10(未決勾留日数460日を原判決に算入)を言い渡した。
 裁判長の「自分の犯した罪と向き合い、社会復帰した際は自分の選んだ人生を歩んで母親の冥福を祈ってください」との説諭に、のぞみ被告は泣きながらうなずいていた。
 数ヶ月後、この裁判長は定年退官した。

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