保線員の過酷な労働環境が招いた悲劇(過失運転致死)

過失運転致死傷
  • 大阪地方裁判所:第11刑事部2係
  • 罪名:自動車運転処罰法(5条 過失運転致死傷罪)

事故の概要

 会社員の男(50)が2020年1月13日午前5時58分ごろ、帰宅中に居眠り運転をしてしまい、右カーブを直進。自転車に乗っていた男性(37=当時)に追突した結果、被害者は脳挫傷を負い搬送先の病院で息を引き取った。現場は吹田市内の道路。

激務の引き起こした事故

 加害者となった男は正月休みから連続して夜勤をしており、翌日にやっと休みが控えている状況であった。 被告人のドライブレコーダーには計3回のあくびが録音されていて、衝突音で目覚めたことからも相当な疲労にあったと言える。
 被害者は出勤途中であったのだが、65~69km/hの車に衝突され、頭蓋骨骨折を伴う脳挫傷という瀕死の状態に。搬送先の病院で妻が見守る中、人工呼吸器が外された。

勤め先の体質

 どこの鉄道会社かは言及されなかったが、「シフトについて言うと冷遇されると思った」と語った被告人の言葉から、職場の環境が良いとは言えない。実際、キツくて辞めた同僚も多いという。その上、事故後に被告人の月収は半分になった。

最期の言葉

 検察側からの質問に、「もう運転は怖くてできない」と涙ながらに答えた被告人に対し、裁判中ずっと泣き続けていた被害者の妻は被害者側参加弁護人を通じて「夫は最後になんと言っていましたか?」と問うた。
「言葉になっていないうめき声だった」
 双方の嗚咽が法廷内にこだました。

結果

 検察側求刑の禁錮2年6ヶ月に対し、弁護側は執行猶予付きの判決を求めた。
 結果は、禁錮2年6ヶ月執行猶予4年であった。
 昨今、鉄道会社の終電繰り上げが話題となっている。私は当初からやむを得ないと考えていたが、今回の事件を取材して、ますます賛成に傾いた。
 個人単位はもちろんのこと、責任は社会全般にも及ぶと思料する。

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