- 大阪地方裁判所:第14刑事部1係
- 罪名:窃盗、建造物侵入
事件の概要
被告人の男(60)がコインランドリーにて女性用下着5点(時価総額約1万円)、別日に同じ店舗で下着7点(時価約2万8千円)を盗んだ事件。
この男、前科4犯だが、窃盗は初めて。余罪の匂いがプンプンする(実際そうだった。後述する)。
盗まれた友人のラグビージャージ
被告人は首のヘルニアで肩が上がらなくなり、洗濯物が干せなくなったためコインランドリーへ通い始めた。ある時、亡くなった友人の形見であるラグビージャージを乾かしに行ったところ、盗難の被害に遭ったという。
男は清掃のオバさんから「今の若い子は盗んだものを平気で洗いに来る」というアドバイス(?)を聞き、以来定期的にコインランドリーを覗きに来るようになった。ちなみに警察を頼らなかった理由は、「不信があったから」。4回も捕まってるため、逆恨みとしか聞こえない。
ちなみにこの清掃の人は証人として出廷していないため、すべて被告人の与太話である可能性もある。
なぜ下着を盗んだのか?
「魔が差して」というのが被告人の主張。ヘルニアの薬が強すぎて判断力が低下しており、洗濯ネットから下着が出てきてついつい盗ってしまったとのこと。
まず、他人の洗濯物を物色したことはおろか、洗濯ネットまで開けていたことに開いた口がふさがらない。本件2件を含めて3~5回は盗んだと自白しており、その中には返したものもあるそうだ。
ちなみに保釈金は元カノが準備してくれたという。
建造物侵入に該当する理由
男が窃盗目的でコインランドリーに行ったわけでないと否認している理由としては、おそらく建造物侵入(刑法130条)にあたらないと主張したいから。
判例では、「侵入」とは、建物の管理者の意に反して立ち入ることをいう。(最判昭58.4.8)
他の例としては、ATMにスキミング装置を設置する目的で立ち入ることなどが挙げられる。(最決平19.7.2)
被告人の場合、コインランドリーを使用する目的以外で立ち入っているため、建造物侵入にあたるわけだ。窃盗と建造物侵入はよくセットで開廷表に載っている。万引きもこのセットで起訴される。
論告求刑と弁護側主張、判決
犯行はコインランドリーに入ってから2分以内に行われているため、物探しでないとし、検察側は建造物侵入にあたると主張。被害者の処罰感情も強いとして、懲役1年6ヶ月を求刑した。
対して弁護側は、犯行を認めて余罪についても自供していること、1件目の被害女性とは10万円、2件目の女性とは12万円の示談が成立していることに加え、勾留によってヘルニアが悪化し、すでに制裁を受けているとして執行猶予を求めた。
判決は、懲役1年6ヶ月執行猶予5年であった。
建造物侵入を認定し、常習性がある上、前件での執行猶予期間が過ぎた直後の犯行であり、被害総額も大きいとしたが、被告人の体調が芳しくなく、被害者が許している点、友人による今後の協力が得られることを踏まえた結論とのことだった。
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