- 大阪地方裁判所:裁判員裁判、第5刑事部合議係、第2刑事部合議係
- 罪名:強制性交等、準強制性交等
(※報道は以下の通り)

(現場となった八剣伝JR岸辺駅前店の跡地)
事件の概要
友人同士である女性客2人に対し、事件現場となる八剣伝JR岸辺駅前店で執拗に酒をすすめた男性店長(49)と、男性店員であるB(22)は、2人を介抱していた。
ところが閉店後、岡本は体調不良であるCさんをレイプし(準強制性交等)、Bは酩酊状態にあるDさんを襲った。(強制性交等)
被害に遭ったCさんは事件後まもなく警察署へ相談に行き、その連絡を受けたDさんも勇気を出して警察署へ向かった。
事件の詳細(Dさんについての審理より)
私はBの審理のみを聴いたため、以下の内容はAの公判内容を含まない点に留意していただきたい。
Dさんはアルバイトからの帰りに友人であるCさんを誘って、八剣伝に入った。BはDさんが好みのタイプであったといい、店長であるAと共謀して、2人に執拗に酒をすすめた。
Dさんは嘔吐するまで酔い、Cさんと共に体調を崩した。AとBは営業が終わっても2人を店内で介抱した。
しかし、閉店を口実に店の照明を落としたAとBは凶行に及ぶ。
ベンチシートに横たわっていたDさんは、Bに無理やりキスをされた。2人とも体調不良のため強く抵抗できなかったのだが、酩酊の度合いがDさんは比較的軽く、泣きながら手足をばたつかせて抵抗した。そのDさんにBは「なんで泣くの?」「気持ちいいよ?」などと声をかけながら犯行を続る。スカートをまくり上げ、下着をおろし、指を挿入するなどの暴行を加えたのちに強制性交に至った。
「気持ち悪くて、怖くて、悔しい」Dさんはそう綴っている。
Bは陰茎を挿入するシーンを動画撮影した。犯行後、証拠隠滅のつもりだろうか、Aの指示で動画を削除している。
事件後のCさんとDさん
Dさんは帰宅すると、自室に閉じこもった。そのまま事件について黙っておこうと思ったそうだ。しかし、Cさんが妊娠を懸念して警察に行ったとの連絡を受け、Dさんも警察署へ向かった。警察からの紹介を受けて、とある施設に行き、検査を受けてモーニングアフターピルを処方された。
被害についての供述も嫌だったが必死にした。
Dさんは知人以外の男性と2人きりになるのが怖くなり、通っていた整骨院に行けなくなった。また、知人の男性であっても連絡をとれなくなった。
現場付近に近寄れなくなり、部屋が暗くなるたびに事件を思い出してしまうと手記に綴っている。
Bの供述
Bは犯行を一応は認めているものの、自身も酔っていて覚えていないと主張していた。示談を求めたが被害者側から拒否されている。
最終陳述にて、Bは謝罪の弁を述べ、家族と見捨てないでいてくれた恋人に感謝と申し訳ない気持ちで一杯である、と口にした。
求刑と弁護側の主張
Dさんの手記には「もっと辛い思いをしてほしい」と書かれており、処罰感情の大きさが伺える。検察側は、前科前歴が無いものの、懲役6年を求刑した。
対して弁護側は、計画性はなく、介抱をしていた。暴行の態様が極めて悪質とは言えず「ごめん」と自ら犯行を止めた。供述内容は保身でなく記憶が曖昧なため。保釈を求めておらず、両親の監督の元、実家での同居を約束しているため再犯の可能性が低いことなどを主張し、執行猶予付きの判決を求めた。
判決
Aに対しては懲役5年(未決勾留日数30日を算入)が下された。
本件はCさんが酩酊状態で抗拒不能であったことに乗じ、膣内射精にまで至ったものであり、前科前歴が無く、損害賠償金100万円を用意しているものの、Cさんの社会生活になお支障をきたしていることなどが理由として挙げられた。
Bに対しては懲役5年(未決勾留日数110日を算入)が下された。
Bも前科前歴は無く、暴行の程度は強度とは言い難いが、Dさんの性的自由を侵害し、処罰感情の強さより、被告人に有利な事由を斟酌しても実刑に処するのが妥当である、との理由だ。
第一審は終わったが、被害者の方は終わりなき苦痛から逃れることができない。どうか安泰な生活が訪れるよう祈念し、被告人たちには獄中での猛省を期待したい。
【2020年12月19日追記】
Bの控訴審判決が大阪高等裁判所で下され、原判決破棄、懲役4年6ヶ月と減刑された。被害者への賠償に対する姿勢が評価される形となった。
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