- 大阪地方裁判所:第9刑事部1係
- 罪名:強制わいせつ
事件の概要
2016年、高槻市でハンバーグ店を営んでいる男(55)が客として訪れたAさん(23=当時)に対し、店の出入り口付近にて3回に渡ってむりやりキスをし、その中には舌を差し入れる犯行も含まれていた。
「小柄で、か細くて目がぱっちりしていて可愛かった」ので「(帰るのが)さみしくて耐えられなくなった」と供述しており、調書の中では「恋愛はキスから始まるため同意がなくてもいい」という持論も紹介された。被告人には妻子があり、犯行をおおむね認めている。
ハンバーグ店の裏の顔
男は〝オーラ鑑定〟という占いでかなり評判らしい。しかし実態は、精神的に弱っている女性をターゲットに愛人をつくる目的であり、3人の女性と不倫関係にあった。ただ、これについては「調書が誤っている」とし、3人の女性はただ仲のいい人で、2人とは肉体関係がなく、自分に依存させるつもりもなかったと男は弁明した。……1人余っている。
現在は「オーラを見るのは危険だから」と占いを控えているらしい。
勇気を出して証言台に立った被害女性
通常、性犯罪の被害者は被告人が否認した場合を除いて法廷には来ない。だが、パーティションの向こう側に被告人がいるのを承知で出廷した。というのも、調書に被告人が不同意した箇所があるため、真実を語るために来たのだという。それだけでも処罰感情の大きさがうかがえる。
犯行当日、Aさんは友人から「最近流行っているハンバーグ屋があって雑談しながら占ってくれる」と誘われて事件現場となった店舗を訪れた。Aさんの隣に座った男は、占いの中で「君を守ってあげたい」「自分の寿命を半分あげる」などと言い、Aの友人を「愛人のライバルだよ」と告げた上で「愛人にならないか」と誘った。
占い中、ずっと腰や肩や頭を触られたAさんはパニック状態になり、出口に向かおうとした。制止した男は正面からAさんに抱きつき、キスをした。「すいませんやめてください」と手を振りほどくも、「そうやな。ごめんな」とまたキスをして抱きつき、なんとか店外に逃れたAさんは気持ち悪さに嘔吐したという。
3年間自首せず、店も占いも続けている状況を知ったAさんは示談金30万円の受け取りを拒否。他にも被害者がいると思う、と涙声で訴えた。
悪あがきする被告人
被告人質問はA証言より後だったのだが、それでも「愛人になってほしいとは言っていない」と男は主張した。その上、自分の寿命がわかるわけはないので「寿命をあげる」とも言っていないと被告人。それはそうだろうが、寿命をあげること自体は可能なのか? と私は思った。また、調書には「陰部に指をいれてイかせる」という文言もあるらしいが否定した。それならなぜ調書に拇印を押したのか。
結果
検察側は被告人の誠意の無い態度を非難し、動機も身勝手であるとして懲役1年6ヶ月を求刑した。対して弁護側は計画性のない犯行であるとし、執行猶予を求めた。
判決は、懲役1年6ヶ月執行猶予4年となった。
理由として、数時間話しただけの間柄でキスを同意するはずもなく、反抗されているのにキスに及んだことを「下劣」と断じ、被害者が4年経っても苦しんでいることが挙げられた。
この裁判は私の推し裁判官が裁判長で、「隻眼の女傑」と心のなかで呼んでいるのだが、「下劣」という言葉の選び方が彼女らしいなと思った。
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