〝ノーマスク男〟こと奥野淳也氏へのインタビュー詳報②

公務執行妨害

 前回の記事では様々な反響をいただき、こちらとしても勉強になることが多々あった。

 特に、「なにを質問したのかよくわからない」という意見を多くいただいたため、今回の記事はQ&A形式としている。また、事前にインタビューフォームを開設し、質問を募った。「偏ったインタビューをしているのではないか」とのご批判があったためである。結果として100以上の質問が集まった。
 あえて冒頭で付言しておくが、フォームに書き込まれたのは9割以上が質問の体を成していない罵詈雑言であり、「好きな食べ物はなんですか?」がとても良い質問に思えるほどであった。結果として、以下の質問の半分は私があらかじめ用意したもので補完している。

奥野淳也氏、大阪地裁にて(撮影=櫛麻有)
スポンサーリンク

奥野氏の素顔

――まずはアイスブレーキングということで、好きな食べ物をお伺いしてもよろしいでしょうか?

 なんでも食べるので、特に好きな食べ物もなければ嫌いな食べ物もありませんね。

――好きなテレビやYouTubeのチャンネルについてはどうでしょう?

 実はあまりテレビを観ないので……というのも、今のテレビの制作は、映像やCGなどを用いてセンセーショナルに誘導するような見せ方になってきているから観ないようにしています。ドライブレコーダーであおり運転の様子を流すのがよい例ですね。〝ひょっこり男〟といったように、事実関係よりも面白おかしく紹介することにシフトしている気がします。
 YouTubeも、編集技術が巧みになればなるほど、伝える内容よりも見せ方の方が重要になって、物事の本質が逸れてしまうことも多々生じます。
 むしろ、活字の方が好きです。映像だと五感をすべて奪われて、自分でモノを考えなくなりますから。
 コロナに関する今のメディアで言うと、様々な医師や専門家の見解がバラエティ番組のような感じで扱われ、視聴者がその情報にカジュアルに流されてしまう傾向があると思います。

――普段している感染対策はありますか?

 みなさんと同じく、よく食べてよく眠ることですね。

スポンサーリンク

ツイッターをしている目的

――毎日ツイートしている目的とゴールをお聞きしたいです。

 マスク強制による非合理的でヒステリックな反応が、なぜ今の日本で生じてしまうのかをつぶやいています。自分が経験したピーチのような問題が生じる背景を、それだけではなくて関連事象に照らし、当事者として経験した私だからこそ発信できることがあるのではないかと思い、ツイートしています。なにがゴールというのはありませんが、日々刻々とコロナや社会の状況が変わっていくなかで、その問題に対して所見を発信したいなと思っています。

――コロナが騒がれなくなっても続けられるのですか?

 そもそもコロナの終わりがどこかという問題もありますが、WHOや日本政府が収束を宣言したとして、それですべてが終わるのでなく、例えばワクチンによる健康被害や財政規律の歪みによる特例国債の乱発や増税は問題になるでしょう。コロナが作り出した社会は今後も尾を引く問題です。人間は自由や権利を獲得するために長い年月をかけてきましたが、不安や恐怖を煽られるといとも簡単にそれらを手放してしまうのかと、コロナ禍を通して考えさせられました。例えば、安全保障や監視社会化など、その命題が先鋭に露呈する事象は、今後も引き続き私たちの社会の選択として考えなければならない問題です。

――奥野さんが今後どうされるのかという声が多かったです。

 マスクを着けないだけでこれほどバッシングを受けるという経験をした私だからこそ、今後も安全安心のために少数者の人権を制限してしまう現象に対して提言を発信していくのが使命かなと思っています。

ピーチ航空に対して

――この質問は多く寄せられたのですが、ピーチ航空に対して損害賠償請求はしないのですか?

 今の時点で請求をするかしないか、あるいはもうしているのかをアナウンスするわけにはいかないです。また、刑事裁判の進捗に関しても、公判前整理手続きにおいて開示された証拠を櫛麻さんにべらべら言うと刑罰が科されますから。(※筆者注 刑事訴訟法281条の5)

――これについては私も法廷ライターとして、民事訴訟に関して現段階で発言するメリットが無いことはわかります。

教育現場において

――「教育委員会が児童にマスク着用を強制したり、黙食させるのは虐待だと思うがどうか」という意見がありました。

 これは虐待だと思います。先生と生徒という権力関係の中で、意思に関わらず負担を強いてしまうのは問題だと思います。また、自己決定を軽視してなんでも上から押しつけてしまうと、子供たちが自分でモノを考える力を減退させてしまうのではないかと危惧しています。

――反対に、子供がワクチンを希望しているのに親権者が同意しないケースについてはどう考えますか?

 それも問題ですし、逆に親が強制することも問題ですよね。判断能力が未熟な子供に対して、周りのサポートを受けて自己決定できるように環境を整えることが必要だと思います。

マスクについて

――マスクの着用を法制化すればいいとお考えですか?

 法制化はできないと思います。タバコならば臨床結果が積み重なっていますが、マスクに関しては異説も多い。法律で義務化のする基礎となる「立法事実」が、果たしてマスク着用にあたるのでしょうか。仮に法制化できてもフランスのように違憲判決が出たり、そもそも国会審理の中で頓挫したりするでしょう。例えば、フランスの行政裁判所は、「相当性の基準」を援用し、仮にマスク着用に一定の効果があったとしても、義務化するには手段としての相当性がないとしました。(※筆者注 日本国憲法においては特別裁判所が設置できないが、フランスでは司法裁判所と行政裁判所に分けられている)

――「インフルエンザなどの一般的な疾病でマスクの効果は証明されているが、着用に意味が無いとする理由を知りたい」という質問がありました。効果の証明に関して、私は飛沫感染の防止のことかと思ったのですが。

 無症状の人が飛沫によって他人にどれだけ感染させるかについては定かでないですし、スパコンで60%の防止効果があるというデータが出たとして、その効果の解釈は人それぞれだと思います。日焼け止めに60%のUVカット効果があると言われて塗るか塗らないかというのは価値観によりますよね。

その他

――前回のインタビューでオウム真理教を例に挙げていましたが、どういった類似点があるとお考えですか?

 社会を良くするために根本から構造を作りかえようとする点です。教義を金科玉条としてニューノーマルな状態に作りかえることを企図したオウムと、「新しい生活様式」のマスク着用の社会的推進はある意味で似ているような気がします。ひとつの目標のもとにすべてを凝集させて、社会の中で長年培われた文化や慣習を、短期的に上から変革しようとすると、様々な歪みが生じます。本来、自然現象でうつっていくウイルスを、マスクによって「人にうつさない」ことが倫理化されるのは、断絶的な転換です。命を守るためのウイルスとの戦争にしても、オウムの教義にしても、中の人たちは「良かれ」と思って本気で変革を夢見るからこそ、そのパワーは増し、社会に残す爪痕も大きくなるでしょう。

――「刑事裁判に関して発言できないのはわかるが、起訴されたこと自体に対してどう考えているか」という質問がありました。

 不当だと考えています。逮捕も不当ですし、国家の代表である検察官が起訴したことも不当です。

インタビューを終えて

 前回の記事で多くの批判を受けた。匿名のインタビューフォームでは、ここでは書けないような卑猥な内容さえ寄せられた。その点、意見の相違はあるにせよ、奥野氏は論理的に物事を考えてノーマスクを選択したのだと感じる。
 私はマスクをすべきだと考えて着用している。だが、着けない人に対して連日のように批判のリプライ(他のアカウントに宛てるツイート)をする余裕は無い。そして、インタビューをした私への個人攻撃までに至るとは想定していなかった。多少の批判は甘んじて受け入れるし、受け入れたいのだが。
 今後も奥野氏への取材を重ねて公判に備える。

コメント

タイトルとURLをコピーしました