「会わないなら学校に言う」海上自衛官の卑劣な手口(飯尾翔太)(強制性交等)

強制性交等
  • 大阪地方裁判所:第6刑事部合議係
  • 罪名:強制性交等
Aさんが連れ去られた路上(撮影=櫛麻有)
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写真販売を脅しに

 2022年2月25日、舞鶴市の海上自衛官、飯尾翔太(36)はAさん(18=当時)を脅迫して性交しようと考えた。この日の約2週間前に交際相手の女性から飯尾は、Aさんが裸の写真をネット上で販売していると聞いた。
「通報するよ」
 大阪市北区堂山町の喫茶店で、飯尾はAさんの通学先に販売の件を伝えると脅した。
 同日午後4時ごろ、喫茶店からほど近いラブホテルにて、飯尾は性交と口腔性交を強制した。AさんからLINEで助けを求められた友人が110番通報。午後4時50分ごろ、あわててスマートフォンのデータを削除していた飯尾は緊急逮捕された。画像フォルダーにはAさんとの性交の様子が残されていた。
 22年6月15日の初公判で、飯尾は「被害者の方には大変申し訳ないことをしました。深く反省しています」と起訴内容を認めた。

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交際相手の仕返しとして

 海上自衛官として9年間勤務していた飯尾は、娘がいるものの21年に離婚している。新たな交際相手とAさんは学校の同級生であり、彼女はAさんに恨みを持っていた。課題で不正な行為に及んだのを、Aさんに密告されたのだ。
 交際相手からAさんのことを聞いた飯尾は、AさんのTwitterの裏アカウントも聞き出した。Aさんはすでに、裸の写真を販売していることが学校に発覚して、もう一度同じようなことがあれば退学にすると告げられていた。
 飯尾は交際相手に、「後輩に頼んでハメ撮りさせようか」と持ちかけた。だが、頼める後輩などおらず、直接会う口実にすぎない。飯尾は裏アカウントにメッセージを送った。実名を知っていると匂わせ、事件の前日に直接会おうとしたが、待ち合わせ場所にAさんは現れなかった。
 交際相手から今度はインスタグラムを聞き出し、「会わなかったらどうなるんかわかるんか」と脅迫した。当初は金を脅し取って交際相手に渡し、後輩からもらった金だと嘘をつく予定であった。
弁護人「性交については考えなかったのか」
飯尾「そういう考えもありました。前日に会えなくて怒りがわいて……」
 法廷ではやがて、飯尾は初めから性交が目的であったと露わになる。

15万円かセックスか

 25日午後4時ごろ、喫茶店にて、飯尾はAさんに15万円払うかセックスするかの二択を示した。この時点で恐喝が成立することを弁護人が指摘すると、「そこまで考えていませんでした」と飯尾。15万円は払えないと思っていたといい、飯尾が金銭を目的としていなかったことがわかる。
検察官「なぜ仕返しが性交なんですか」
飯尾「性欲を満たすためでもありました」
検察官「性交を考えたのは事件の前日とおっしゃっていますが、ラブホテルを検索している履歴が2月11日(※)以降からあります」(※Aさんの裏アカウントを知った日)
飯尾「あわよくばと考えていました」
 二人は歩いて10秒もしないラブホテルに移動した。「服脱いで」と指示して口腔性交させた後、ベッドへ移動する前に5万円を要求した。交際相手に渡すつもりだったという。
弁護人「お金と引き換えだったはずなのに、さらにお金を要求?」
飯尾「弱みにつけこんでしまいました」
弁護人「Aさんはコンドームと引き換えだったと供述していますが」
飯尾「記憶にありません」
 現場からは使用済みのコンドームが押収されている。
 飯尾は、交際相手にいい格好をしたかったと動機を述べた。自衛官としては懲戒免職処分が予定されているという。

「熱い」検察官

 今回の公判を担当している検察官は大変「熱い」男性である。奥野淳也被告の公判も担当していて、保釈中の監督を誓約している奥野の父の、責任感の無さを鋭く指摘していた。
 論告という手続きで検察官は通常、用意している文章を淡々と読み上げるものだが、彼はわかりやすい言葉に置き換えて訴えかけるように卑劣な手口と悪質さを非難した。
 求刑は懲役5年であった。
 対して弁護側は、示談金が比較的高額であること、実名報道されていることなどから、執行猶予付きの判決を求めた。
 判決は、懲役3年の実刑判決であった。
 量刑相場からして低く出たのは示談金の影響があるのだろう。メディアは示談金について書かないようにしていて、それは示談金を受け取ることが「金で許した」という曲解を招くことを恐れてのことだろうが、もっと読者を啓蒙してほしいし、裁判を身近に感じられる記事があればと思う。

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